犬と猫の麻酔について
2011.07.30
獣医師の脇坂佳宏です。
猛暑日が続いていますが、体調を崩されていませんか?
ワンちゃんも、今年の暑さに参っているようで、元気・食欲消失・消化器症状で来院されることも多くなっています。クーラーや扇風機を使って、室温管理(設定温度は28度が目安)をしっかりすることで今年の夏を乗り切りましょう!
さて、去る7月10日に、岡山で開業されている小出和欣先生の麻酔学セミナーを受講いたしました。
皆さんは、『麻酔』、というものに対してどのような印象をお持ちでしょうか?『何か怖いもの』と思っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか?今日はそんな、『麻酔』について少し書こうと思います。
ワンちゃんや猫ちゃんには、手術はもちろんですが、検査や処置を行う時でさえ、麻酔が必要になることがあります。例えば、歯石除去。人間であれば、歯医者さんが「はーイ、お口を空けてくださいねー。」の一言で処置を進めることができますが、ワンちゃんや猫ちゃんはそうはいきません。なだめようが、褒めようが、なかなかお口を空けてくれない子がほとんどです。そのような状態で、大きな音の出る超音波スケーラーで歯石を取っていくのは不可能に近いことなのです。また、人間では内視鏡検査の際に全身麻酔をかけることは少ないでしょうが、ワンちゃんの場合は無理です。例え、何とかお口に内視鏡を入れることができたとしても、直後に内視鏡のカメラを噛み千切ってしまうでしょう(因みに内視鏡のカメラは一本何百万円もします・・・・)。
そんな、麻酔において重要なのは、今回のセミナーのテーマでもありましたが、『モニタリング』です。モニタリングとは、麻酔のかかっている患者さんの状態を正確に把握し、その状態を見ながら、麻酔をコントロールすることです。モニタリングする項目はいくつもあり、当院でも、麻酔時には、心電図、血圧、体温はもちろん、呼気中の二酸化炭素の濃度を測り、呼吸の状態を把握するカプノグラム、全身の酸素濃度を測るパルスオキシメーターなどを用いて、安全な麻酔を心がけています。
セミナーを始めるにあたり、小出先生がおっしゃった以下の一言が、とても印象にのこっています。「これを胆に命じておいて下さい。現在の獣医療で、『この薬を使えば100%大丈夫』という薬も無いし、『この麻酔法を使えば100%安全』という麻酔法もありません。われわれ獣医療を行うものが、日々どれだけ小さなミスを防いでいくかが、安全な麻酔を行うための近道です。」
私も、日々精進し、より安全な麻酔を患者さんに提供できるよう頑張っていきたいと思います。