症例紹介

Case

2025/3/18

消化器科

犬の腸閉塞の一例当院で腸閉塞と診断し外科手術で治療した症例

犬を飼っていて、愛犬が異物を食べてしまった経験があるという方は多いのではないでしょうか。
犬が消化できないものや健康を害するものを食べてしまうことは、ご家族にとって恐れていることのひとつですよね。
犬が異物を食べてしまったとき、腸にそれが詰まってしまうと、最悪の場合は命に関わることもあります。

今回は当院で腸閉塞を診断し治療した症例をふまえ、腸閉塞について解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、身近な疾患である腸閉塞に備えましょう。

腸閉塞とは

腸閉塞は、腸に異物が詰まってしまう病態です。
消化管である腸は、チューブのような形をしています。
そのため、腸の内径と同じくらいのサイズのものは詰まってしまう恐れがあります。
犬で多い原因は誤食で、おもちゃや生活用品を誤って食べてしまうことです。
腸閉塞を起こしやすい異物の代表例は、

  • 梅干しの種
  • とうもろこしの芯
  • ジョイントマットの破片

などが挙げられます。
いい匂いがしたり、かじって遊ぶものを誤って食べてしまうケースが多いです。
腸に異物が詰まってしまうと食べたものがその先に進めず、腸の動きが悪くなりさまざまな問題が出てきます。

腸閉塞を起こしたときの症状

腸閉塞を起こしたとき、最も一般的な症状は嘔吐です。
閉塞したばかりのときは、犬は元気で食欲があることが多いです。
しかし、食事をしても異物が詰まっているため食べたものが先に進まず閉塞した部分より前に溜まっていきます。
溜まった食べ物が、消化管の容量を超えると、それ以上に食べたものを嘔吐をするようになります。
腸閉塞の嘔吐は急に発生し、何度も繰り返すことが多いです。

腸閉塞を放っておくと…

腸閉塞は、飼い主様から見えないところで起こっているためか、発覚が遅れることがあります。
腸閉塞を放っておくとどのような状態になってしまうのでしょうか。

脱水

何度も嘔吐すると、体は食事や水を得ることができません。
長時間そのような状態が続くと、脱水症状が出るようになります。
犬が脱水を起こすと元気や食欲がなくなり、ぐったりしてきます。

腸管の壊死

お腹のなかで異物が詰まってしまったとき、その部位の腸の血流が悪くなっています。
腸はよく動き栄養を吸収する重要な臓器です。
そのため正常な腸では、血流は豊富で常に多くの酸素を必要としています。
腸に異物が詰まると、閉塞部位への血管がうまく機能することができず、血液が腸へいかなくなってしまいます。
腸の血流がわるくなっている時間が長くなると、腸の組織が酸素不足になり壊死することがあります。
腸が壊死してしまうと、組織が脆くなって破れてしまうなど、致死的な経過を辿ることもあり注意が必要です。

腸閉塞の治療

腸閉塞の治療は、外科手術です。
異物を誤食した直後に受診された場合や、誤食はあっても閉塞していない場合は、手術でなく内視鏡や薬剤による催吐処置で異物を除去できることもあります。
しかし、閉塞してしまっている場合は手術するほかありません。
腸閉塞の手術では、全身麻酔をかけてお腹を開きます。
消化管を胃から順に全て触診して、異物の詰まっている部位と腸が壊死していないかを調べます。
異物の詰まっている場所が特定されたら、腸を切開して異物を除去します。
腸が壊死している部分がある場合は、壊死した部分の腸も切除し、縫い合わせることが必要です。
腸閉塞の手術の最も大きなリスクは、腸の離解です。
腸の切開した部分が離解してしまうと、内容物が腹腔内に漏れ出してしまいます。
腸管の内容物は細菌が多く含まれるため、漏れ出してしまうと命に関わる感染症を引き起こします。

実際の症例

今回ご紹介する症例は、7歳のチワワで避妊手術の済んだ女の子です。

当院へは、2日前から1日5〜6回嘔吐していて元気と食欲がないとの主訴で来院されました。
頻回の嘔吐だけでも心配ですが、元気と食欲がなくなるととても心配ですよね。
血液検査では、炎症に関与する血球である白血球が増加しており、嘔吐による電解質の乱れが確認されました。
レントゲン検査では、胃が大きく拡張して腸にガスが溜まっていました。

腸閉塞のレントゲン画像

エコー検査を行うと、胃の中に食べたものがうっ滞していて、腸の中でも空腸という部分に白く影を引くような様子が見られました。

腸閉塞のエコー検査画像

これは、なにか異物が腸に詰まっている可能性があるということです。
異物が詰まって食べ物やガスがその先に進めなくなり、胃や腸に溜まっていたということですね。
これらの情報から異物による腸閉塞を疑い、外科手術を行いました。
手術で消化管を触診すると、腸に異物が詰まっている部位がわかり、その周囲の腸が10cmほど変色していました。
これは、変色している部分の腸が壊死してしまっていることを意味します。

腸閉塞により腸が壊死している様子

腸の異物が詰まっている部位を切開すると、石が出てきました。
石と腸の変色している部分を除去すると、次は腸をつなぎ合わせる処置をしました。

腸管吻合を行っている様子

縫合のあとは、漏れがないことを確認し、手術を終えました。

切除した腸と閉塞していた石

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は腸閉塞について、当院で治療した症例をふまえて解説しました。
腸閉塞は、飼い主様にとって比較的身近で恐ろしい状態ですよね。
疑わしい症状が出ている場合や異物を食べてしまったことが分かっている場合は、すぐに動物病院を受診することが重要です。
すぐに対処することで手術を免れたり、少しでも状態のいいときに手術を行うことができます。

心配なことがある場合はぜひ、当院までご相談ください。

診察案内はこちら
当院のLINE公式アカウントから簡単に予約が可能です

兵庫県神戸市の動物病院
リバティ神戸動物病院

pagetop
loading