症例紹介

Case

2025/3/15

腫瘍科

犬の浸潤性脂肪腫の一例犬の脂肪腫は放置してはいけない場合もある

愛犬の体にしこりを見つけた時、多くの飼い主様は不安を感じられることでしょう。
犬にできるしこりの中でも、比較的よく診断されるものとして脂肪腫が挙げられます。
脂肪腫は良性腫瘍として知られていますが、中には「浸潤性脂肪腫」と呼ばれる特殊なタイプの脂肪腫が存在します。
浸潤性脂肪腫は一般的な脂肪腫と異なり、周囲の組織に広がる性質を保つため、適切な診断と治療が重要です。
今回の記事では犬の浸潤性脂肪腫について、実際の症例を交えてご紹介します。
愛犬の健康を守るためにも、ぜひ最後までお読みいただき、浸潤性脂肪腫の理解を深めましょう。

犬の脂肪腫とは

脂肪腫は中年から高齢の犬の皮下組織にできる良性腫瘍の一種で、脂肪細胞が過剰に増殖することで形成されます。
脂肪腫は基本的に痛みを伴わず、柔らかくて動くしこりとして触知されます。
多くの場合、脂肪腫は健康に影響を与えないため、治療が必要とされることは少ないです。

しかし、脂肪腫の中には注意が必要なものもあります。

注意が必要な浸潤性脂肪腫とは

浸潤性脂肪腫は脂肪腫の一種ですが、通常の脂肪腫とは異なり、周囲の筋肉や結合組織に浸潤(広がる)する性質を持っています。
浸潤性脂肪腫は良性腫瘍ですが、その性質から、放置すると周囲の組織にダメージを与え、機能障害を引き起こすことがあります。

例えば、浸潤性脂肪腫が肘や膝の裏にできた場合は歩きにくくなってしまいますね。
浸潤性脂肪腫は犬の体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に胸部や四肢に多く見られます。

浸潤性脂肪腫と一般的な脂肪腫の違い

浸潤性脂肪腫は見た目や手触りだけでは普通の脂肪腫との区別が難しい場合があります。
ただし、次のような場合には浸潤性脂肪腫の可能性を考えるべきです。

  • 成長が早く、急速に大きくなっている
  • 境界が不明瞭で、どこまでが腫瘍か分かりにくい
  • 周囲の筋肉などにくっついていて、可動性が低い
  • 通常の脂肪腫より硬く、触ると犬が痛がる

通常、腫瘍診断の最初のステップとして細胞診が実施されますが、浸潤性脂肪腫と一般的な脂肪腫は細胞診だけでは区別が困難です。
浸潤性脂肪腫が疑われる場合は画像検査も組み合わせて行い、腫瘍の広がりを確認し、すみやかに治療を行うことが大切ですね。

浸潤性脂肪腫の治療

浸潤性脂肪腫は放置すると周囲の組織にダメージを与える可能性があるため、通常は外科手術による切除が推奨されます。
浸潤性脂肪腫は手術を行った後も再発しやすいため注意しましょう。
再発のリスクを最小限に抑えるためにも手術の際には、できるだけ広範囲に腫瘍を切除することが望ましいです。
また、術後の経過観察も重要です。
定期的な検診と必要に応じて画像診断を行い、再発の有無を確認します。
再発をしてしまった場合や手術で取りきれない場合は放射線治療などを合わせて行うこともあります。

実際の症例

ここでは実際に当院で治療を行った浸潤性脂肪腫の症例をご紹介します。

症例は10歳の避妊メスのマルチーズで2年前から右脇に腫瘍があり、1年前に他院で脂肪腫と診断されているとのことでした。

この症例では触診で腫瘍が周囲の筋肉にくっついている様子があり、浸潤性脂肪腫の可能性が考えられ、飼い主様と相談の上、手術を実施することになりました。
手術の前の写真では脇の下に腫瘍があり、腫れていることが分かります。

手術前の脂肪腫の写真

手術で皮膚を切開してみると、腫瘍が筋肉にくっついて発生していました。

腫瘍が筋肉にくっついている様子

そのため、下の写真のように腫瘍を筋肉から慎重に分離しながら摘出を行いました。

腫瘍を筋肉から剥離している様子
この症例は術後の経過もよく、現在も元気に過ごしています。
しかし、摘出した腫瘍は病理検査で浸潤性脂肪腫と診断されたため、今後は再発がないか注意深くモニタリングをしていく予定です。

まとめ

犬の浸潤性脂肪腫は一般的な脂肪腫とは異なり、周囲の組織に浸潤する性質を持っているため、放置すると深刻な問題を引き起こす可能性があります。
浸潤性脂肪腫が疑われる場合には、早期に獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
「脂肪腫と診断されたけど、大きくなってきている」

このように脂肪腫と診断されたけど、愛犬の体調が心配な飼い主様も多いと思います。
愛犬のしこりの治療でお悩みの方は、気軽に当院までご相談ください。

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