2025/3/5
整形外科
犬の橈尺骨骨折の一例実際の症例をもとに治療と注意点を解説
犬の橈尺骨(とうしゃくこつ)骨折は、特に若齢犬や小型犬で発生しやすい骨折の一つです。
高いところからの落下や交通事故が主な原因となり、適切な治療を行わないと骨が正しくつかないこともあります。
本記事では実際の症例をもとに、診断や治療、回復までの経過を解説します。
犬の橈尺骨骨折とは?
犬の前足には、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)の2本の骨があります。
この2本の骨が折れることを橈尺骨骨折といいます。
特に橈骨は体重を支える役割が大きく、骨折すると歩行が困難になります。
犬の橈尺骨骨折は小型犬や子犬で発生しやすい骨折です。
- トイ・プードル
- チワワ
- ポメラニアン
- イタリアングレーハウンド
などの骨の細い小型犬は特に骨折しやすく、注意が必要ですね。
犬の橈尺骨骨折の主な原因は、外傷によるものです。
- 落下事故
- 交通事故
- 踏まれる
- 転ぶ
などが原因で骨折が起こってしまいます。
犬の橈尺骨骨折の症状
犬が橈尺骨を骨折すると、以下のような症状が見られます。
- 足を着けなくなる
- 触ると嫌がる、鳴く
- 腫れや変形する
骨折を放置すると骨が変な形でくっつくこともあるため、早期の治療が重要です。
骨折の程度によって症状は異なりますが、犬が急に足をかばうようになった場合は、早めに動物病院を受診することが重要です。
診断方法
橈尺骨骨折の診断には X線検査が有効です。
骨折の位置やズレの程度を確認し、適切な治療法を選択します。
場合によっては、CT検査でより詳細な評価を行うこともあります。
犬の橈尺骨骨折の治療法
橈尺骨骨折の治療には、外固定と外科療法がありますが、多くの場合手術が推奨されます。
外固定は
- 骨のズレが少ない場合に適応
- 治癒までに時間がかかる
- 関節が固まりやすく、適用できるケースが限られる
という特徴があります。
外科療法の特徴は
- ズレが大きい場合や治癒しにくい骨折に適応
- 手術後の管理が重要だが、早期の回復が期待できる
です。
橈尺骨骨折は自然治癒に時間がかかるため手術での治療がおすすめです。
橈尺骨骨折の手術方法
橈尺骨骨折の手術では、折れた骨をプレートやスクリューで固定する手術を行います。
骨の位置を正しく元に戻して固定することで、骨が正常にくっつくようにします。
骨折の度合いによっては、プレートやスクリューを組み合わせて治療することも。
橈尺骨骨折の手術は、強固に固定できるため早期の歩行が可能なことが大きなメリットです。
しかし、もちろん手術には全身麻酔が必要ですし、術後の感染のリスクもあります。
ご不安な点は遠慮なくご相談ください。
手術後も1週間は安静が必要です。
骨が完全にくっつくまでにはさらに2〜3ヶ月かかります。
手術後に無理な動きをすると再骨折のリスクがあるため、手術後も定期的に診察を受けましょう。
実際の症例
0歳9ヶ月のスタンダードプードルの未避妊雌の症例です。
この犬は交通事故により右前肢を引きずる症状が出ていました。
他院を受診し右橈尺骨の骨折が認められました。
手術が必要だと判断されたため、当院を受診。
当院でもX線検査を行い、右橈尺骨骨折を確認しました。
こちらがその写真です。
飼い主とご相談の上でプレートと髄内ピンを用いた手術を実施。手術後の写真がこちらになります。
術後は安静を徹底し、経過観察を行いました。
術後1ヶ月半後のX線検査で骨のつきが良好と確認し、歩様も正常に回復しています。
こちらが1ヶ月半後の写真です。
骨がきれいに繋がっていますね。
犬の橈尺骨骨折を防ぐために
橈尺骨骨折は、不意の事故で起こることが多いため、日常生活の工夫で予防することが大切です。
事故を防ぐためにできることは
- リードをつけて散歩し、交通事故を防ぐ
- 滑りやすい床にカーペットを敷く
- 高いところからのジャンプをさせない(特に小型犬)
- 活発な犬には適度な運動をさせ、筋肉をつける
などがあります。
まとめ
犬の橈尺骨骨折は、交通事故や転倒によって発生しやすい骨折です。
今回の症例のように、手術によって良好な回復が見込まれる場合が多いですが、早期発見と適切な治療が重要になります。
当院では犬の整形外科手術も行っています。
愛犬の足の使い方がおかしいと感じたら、当院へご相談ください。
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