2025/2/20
歯科
猫の唾液腺嚢胞の一例当院で外科手術を行い治療した症例
唾液腺嚢胞という病気を聞いたことはありますか?
唾液腺嚢胞は、通常目に見えないところにある唾液腺が大きく腫れ上がる病気です。
想像するとなんだか恐ろしいですよね。
今回は、猫の唾液腺嚢胞について、当院で外科手術を行なった症例を踏まえて解説します。
猫を飼っている方はぜひ最後までお読みいただき、猫の病気について詳しく知っておきましょう。
唾液腺嚢胞とは
唾液腺嚢胞とは、唾液を分泌する腺である唾液腺に、唾液が大量に溜まってしまう病態を指します。
猫の口の周りには、いくつかの唾液腺が存在し、そのどれもが唾液腺嚢胞になる可能性があります。
その中でも、猫では舌下腺と呼ばれる舌の裏にある唾液腺が唾液腺嚢胞になることが多いです。
舌下腺に発生した唾液腺嚢胞は、特に「ガマ腫」と呼ばれます。
唾液腺嚢胞は、猫よりも犬で多い病気ですが、どんな年齢の猫でも発症することがあります。
唾液腺嚢胞ができる原因
普段唾液を分泌し、運んでいる唾液腺や導管には、唾液が満たされています。
それが何らかの原因で破裂したり詰まったりしてしまうと、唾液を排出できず、唾液腺をつつむ袋の中に唾液が溜まるようになります。
これが唾液腺嚢胞ができる原因です。
傷ついてしまう原因は、外傷や炎症であることもありますが、わからないことも多いと言われています。
唾液腺嚢胞の症状
唾液腺嚢胞は、多くの場合片側に突然発症します。
腫瘍ができたときのように、唾液腺のある場所が腫れ上がり、水風船のように中が液体で満たされたような触り心地です。
腫れていても、炎症を伴わないことが多いので、通常は痛みなどの症状はありません。
唾液腺嚢胞ができる部位によってそれ以外の症状は異なります。
猫に多い舌下腺の唾液腺嚢胞の場合は、舌の裏が大きく腫れるようになるため、舌の位置が保てなくなります。
舌の動きが制限されたり、舌をしまえなくなったりすることで、元気食欲がなくなったり、涎がたくさん出るようになります。
重症化すると、大きくなった唾液腺嚢胞により、呼吸がしづらくなることもあるので、早期発見が重要です。
唾液腺嚢胞の治療
唾液腺嚢胞の治療法は、二つあります。
穿刺吸引
穿刺吸引は、体表から大きくなった唾液腺に針を刺して中の液体を抜く方法です。
唾液をしっかり抜き切ると、その直後は唾液腺嚢胞はしぼみ、一見治ったように見えます。
ほとんどの症例で6〜15週間以内に再発すると言われていますが、一部の症例では、何度か抜去を繰り返すうちに唾液腺嚢胞がなくなるというケースもあります。
穿刺吸引のメリットは、穏やかな性格の猫であれば無麻酔で行えて、侵襲性が少ないことです。
たまった唾液をしっかり抜去するために、猫を押さえている必要があるので、安全に行うことが難しい猫では鎮静をかけることもあります。
デメリットは、何度も針を刺すことで、感染症のリスクがあるということと、吸引のみで改善するケースが少ないことです。
唾液腺摘出
唾液腺嚢胞の最も根本的な治療法が、唾液腺摘出です。
問題となっている唾液腺と導管を完全に切除する外科手術を行います。
完全に摘出できていれば、再発することはほとんどなく、合併症を発症することもほとんどありません。
大きく腫れていた唾液腺がなくなると、皮膚があまり、そこに液体が溜まることがありますがこれは唾液ではありません。
ドレーンを設置して排液したり、自然に治癒過程で吸収されるのを待つことで改善することが多いです。
猫に多いガマ種の場合は、術後数日は柔らかい食べ物をあげると良いですが、術後しばらくすると発症前と変わらない生活を送ることができます。
当院で治療した症例紹介
今回ご紹介する症例は、3歳のブリティッシュショートヘアの避妊手術済みの女の子です。
食欲はあるけど、ご飯を食べづらそうにするとの主訴で当院に来院されました。
診察室で口の中を確認すると、舌の下の左側にできものが存在しました。
口を閉じているとわかりませんが、口の中を見ると明らかにわかりますね。
顎の下から針を刺して吸引すると、10ml程度の唾液が採取されたため、これで唾液腺嚢胞の疑いが強いと診断できます。
唾液腺嚢胞ができる原因として疑わしいものはなく、炎症が原因で一時的に詰まってしまった可能性を考えました。
そこで、抗炎症薬であるステロイドを1週間使用しましたが、効果はありませんでした。
ご家族と相談し、なるべくストレスのかかる手術は避けたいということで唾液が溜まったら抜去するというのを繰り返していました。
しかし、食欲不振や食べづらそうな仕草をする頻度が増えてきたため、再度ご家族と相談し、根本的な治療である手術に踏み切りました。
原因として考えられる唾液腺である下顎腺と舌下腺、そしてその導管を切除する手術です。
こちらが実際の手術中の写真です。
切除した組織を病理検査に出すと、唾液腺と導管がきちんと切除できているとの確認ができました。
その後、経過観察を続けていますが、再発することはなく、元気に過ごしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は猫では比較的珍しい唾液腺嚢胞について、当院で治療した症例をふまえて解説いたしました。
突然発症することもある唾液腺嚢胞、愛猫の身に起こったらびっくりしますよね。
唾液腺嚢胞は、治療に手術が必要になる場合が少なくありません。
当院では、外科手術に力を入れております。
ご自宅の猫に不安なことがあればぜひ、一度ご相談ください。
診察案内はこちら
当院のLINE公式アカウントから簡単に予約が可能です
兵庫県神戸市の動物病院
リバティ神戸動物病院