症例紹介

Case

2025/2/13

腫瘍科

犬の消化器型リンパ腫の一例実際の症例をまじえて紹介

犬がかかる腫瘍にリンパ腫というものがあります。
その中でも消化器型リンパ腫は、犬の消化管に発生する悪性腫瘍です。
「最近犬の食欲がない気がする」
「犬が嘔吐や下痢をしている」
「犬のお腹に何か触るかも」
と言った悩みをお持ちではありませんか?
もしかしたら消化器型リンパ腫かもしれません。

今回は、犬の消化器型リンパ腫の概要と、実際の症例をもとにした治療の流れについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬がリンパ腫になった時に備えてください。

佇むビションフリーぜ

犬の消化器型リンパ腫とは?

犬がかかる腫瘍の中には、リンパ腫というものがあります。
リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化して異常増殖する病気です。
犬の腫瘍の中でも比較的多く見られます。

リンパ腫にはいくつかの種類があり、その中でも消化器型リンパ腫は消化管を主な発生部位とするリンパ腫です。
犬の消化器型リンパ腫は、中高齢の犬で発症リスクが高まりやすいため注意が必要です。

消化器型リンパ腫は

  • 小細胞性リンパ腫
  • 大細胞性リンパ腫

などにタイプが分けられ、それぞれ症状や治療法などが変わります。
そのため、検査でタイプを特定することが重要です。

犬の消化器型リンパ腫の原因は、はっきりとはわかっておらず、遺伝や発がん物質の摂取などが考えられます。

犬の消化器型リンパ腫の症状

犬の消化器型リンパ腫では

  • 食欲の低下
  • 体重減少
  • 嘔吐・下痢
  • 貧血

などの症状が見られることがあります。

小細胞性リンパ腫は比較的進行が緩やかですが、大細胞性リンパ腫では数日で急変することがあります。
犬の消化器型リンパ腫の初期症状は、胃腸炎などとあまり変わらないため、様子を見ているうちに腫瘍が進行してしまうことも。
気になる症状がある時は、様子を見ずに早めに動物病院を受診しましょう

犬の消化器型リンパ腫の治療方法

犬の消化器型リンパ腫では、主に抗がん剤による治療を行います。
リンパ腫は血液の腫瘍であることから、手術による完治が難しいため、抗がん剤が第一選択の治療です。
使用する抗がん剤の種類は、リンパ腫の種類や細胞タイプによって決定し、時には複数の抗がん剤を組み合わせます。
犬の状態によっては、吐き気どめや消化管運動改善薬なども合わせて使用することで治療を行います。

犬の消化器型リンパ腫は、他のリンパ腫と比べると抗がん剤への反応が悪く、適切な治療を行なっても予後があまりよくないことがあります。
もちろん効果が全くないわけではありません。

抗がん剤は時に副作用を引き起こすこともあるため、どのような治療をしていくかは獣医師とよく相談しましょう。

実際の症例紹介

実際に当院に来院した、消化器型リンパ腫の症例をご紹介します。

13歳で避妊済みメスのビションフリーゼが、食欲低下を主訴に他院にて診察を受けたところ、腹腔内の腫瘤を指摘され、当院に来院されました。
当院では、血液検査、レントゲン検査、エコー検査を実施し、腸管内の腫瘤と腹腔内リンパ節の腫大を確認。

腸管の腫瘤を採取して細胞診を行ったところ、大細胞性リンパ腫の疑いが強かったため、さらなる検査の実施でT細胞性リンパ腫と判明しました。

次の写真が検査時の腸管のエコー画像です。

エコー検査腸管の腫瘤により分厚くなった腸

飼い主様とご相談の上、抗がん剤のL-アスパラギナーゼの投与と、胃腸薬、制吐剤による症状の緩和を開始。
1週間後に再度エコー検査を実施したところ、腸管の腫瘤が小さくなっていることが確認できました。
これが1週間後のエコー画像です。

治療により腫瘤が小さくなり薄くなった腸

継続的な抗がん剤治療に効果があると判断したため、続けて抗がん剤のロムスチン投与を開始しました。

治療の経過は順調で、遠方に住んでいる患者様であったため、現在はかかりつけ医と連携しながら経過観察を継続しています。

まとめ

犬の消化器型リンパ腫は、高齢犬で発症しやすい消化管の悪性腫瘍です。
初期症状では胃腸炎のような症状が出るため、様子を見ている間に腫瘍が進行してしまう可能性があり、注意が必要です。

犬の消化器型リンパ腫の基本的な治療は抗がん剤治療です。
今回の症例では、適切な治療によりリンパ腫が小さくなったことが確認できました。

当院では腫瘍に対する治療が得意な獣医師が在籍しています。
セカンドオピニオンにも対応しておりますので、消化器症状が続く場合や他院で腫瘍の診断を受けた場合にはぜひご相談ください。

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