症例紹介

Case

2025/1/3

腫瘍科

犬の乳腺癌の一例犬の乳腺腫瘍の半分が悪性?

犬の乳腺腫瘍は、特に高齢のメスに多く見られる乳腺に出来る腫瘍です。
避妊手術をしていない犬ではリスクが高まり、発見が遅れると命に関わることもあります。
犬の乳腺腫瘍は良性のものと悪性のものに分けられます。

「乳腺腫瘍ってどんな病気?」
「悪性の乳腺腫瘍は治るの?」
「どうしたら予防できるの?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は犬の乳腺腫瘍の中でも、悪性の腫瘍である乳腺癌について実際の症例を交えながら解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、乳腺腫瘍についての理解を深めましょう。

犬の乳腺腫瘍とは

犬の乳腺腫瘍は、乳腺に発生する腫瘍で犬の腫瘍全体の中でも一般的なものです。
特に避妊手術を行っていない10歳以上のメスで多く見られます。
乳腺腫瘍には良性と悪性のタイプがありますが、約50%が悪性であるとされています。

悪性乳腺腫瘍

乳腺腫瘍には良性と悪性が存在します。
悪性の乳腺腫瘍を乳腺癌といいます。
乳腺癌はリンパ節や肺などに腫瘍が移ってしまう転移を起こしやすく、大きくなるスピードも速いです。
乳腺腫瘍は一つしか発生しないわけではなく、複数の乳腺に多数できる場合があります。
乳腺腫瘍が複数ある場合は良性と悪性がどちらも存在することも多いです。

乳腺癌の症状

乳腺腫瘍は初期の段階では、良性も悪性も乳腺部分にしこりや腫れが見られる程度です。
しかし乳腺癌は

  • しこりや腫れがどんどん大きくなる
  • しこりが破裂して出血する
  • 元気や食欲の低下
  • 体重減少

などの症状が見られる場合もあります。
進行すると呼吸困難などの全身症状が現れることもあります。
乳腺癌は放置すると命に関わる病気です。
早期発見のためには、飼い主による日常的な触診や定期的な動物病院での健康診断が重要です。

乳腺癌の治療は?

乳腺癌は基本的には外科的な切除が第一選択になります。
乳腺癌が転移を起こす前であれば、手術のみで完治することも多いです。
手術には乳腺を一部だけ切除する方法と、すべての乳腺を切除する方法があります。
一部だけ切除する方法は手術時間が短く、傷も小さくて済みますが、ほかの乳腺で再発する可能性があります。
すべての乳腺を切除する方法は、手術時間が長くなり傷も大きくなりますが、再発のリスクは低くなりますね。
乳腺癌が転移を起こしている場合は、手術だけではなく抗がん剤や放射線治療が必要です。
抗がん剤や放射線治療は体への負担も小さくないので、治療方法については獣医師とよく相談して決めましょう。

乳腺癌の実際の症例

今回ご紹介する症例は9歳4か月のミニチュアダックスフントのメスです。
乳腺の腫れと、元気食欲の低下がみられるとのことで来院されました。
診察では、発熱と炎症の値があがっていることが確認されました。
入院治療で熱や炎症の値も下がり、乳腺の腫れも落ち着いたため一度退院。
3か月後に再び乳腺の腫れが見られたため、外科手術で乳腺を切除することになりました。
こちらが腫れている乳腺の写真です。

乳腺の腫れの様子

手術で摘出した腫瘍で病理組織検査を行ったところ、乳腺癌と診断されました。
リンパ節への転移も確認されましたが、ご家族と相談し抗がん剤や放射線治療は行わずに、経過をみていくことになりました。
現在のところ術後の経過は良好で、再発は確認されていません。
今後も慎重に再発がないかを見守っていきます。

乳腺癌は予防できる?

犬の乳腺癌の最も有効な予防方法は避妊手術です。
避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍そのものができる確率が下がります。
犬の場合は一番最初の発情の前に避妊手術を行うことで、予防効果が高まります。
避妊手術が遅くなればなるほど乳腺腫瘍ができるリスクがあがるため、遅くても2歳ごろまでには避妊手術を済ませておきましょう。

まとめ

今回は乳腺腫瘍と乳腺癌について当院で治療した症例をふまえて解説しました。
犬の乳腺癌は治療が遅れると命に関わる恐ろしい病気です。
早期に発見して治療するためにも日ごろから犬の体をよく触るようにしておきましょう。
避妊手術をしていない高齢のメスの犬は乳腺腫瘍のリスクが高まります。
犬の避妊手術はできるだけ早めにやることをおすすめします。

当院では乳腺腫瘍の治療はもちろん、避妊手術についてもいつでもご相談を受け付けています。
犬の体のことで何かご不安なことや疑問がある場合は、お気軽にご相談ください。

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