症例紹介

Case

2024/12/9

腫瘍科

犬のメラノーマの一例当院で犬の口腔内メラノーマに対し下顎切除を実施した症例

犬を飼っている皆さまでもっとも恐れる事態の一つが、悪性腫瘍の発生ですよね。
悪性腫瘍のイメージとして、

  • 転移することが多いのではないか
  • 抗がん剤などの治療が大変
  • ガリガリに痩せてしまう

などをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
犬でよく発生する悪性腫瘍のなかにはメラノーマという特に口腔内で発生しやすい腫瘍が存在します。

今回は当院でメラノーマの診断をし、治療を実施した症例を踏まえて、特に口腔内に発生したメラノーマについて解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、メラノーマについて詳しく知っておきましょう。

メラノーマとは

メラノーマとは、悪性黒色腫とも呼ばれ、メラニン色素を作るメラノサイトという細胞が腫瘍化したものです。
腫瘍化とは、細胞分裂の過程で、細胞の増殖を制御する機構がエラーを起こし、無制限に増殖するようになることを指します。
犬のメラノーマの場合、メラニン色素細胞が多く分布する口腔内に発生することが最も多いです。
メラノーマは、人間ではホクロの腫瘍と言われることもあるように、見た目が特徴的です。
通常メラノサイトはメラニン色素を多く含むため、黒っぽい腫瘍を形成します。
まれに無色のメラノサイトが腫瘍化することもあり、その場合はピンク色の腫瘍になります。
メラノーマは悪性腫瘍で、細胞分裂のスピードが早く、肺や肝臓などほかの部位に転移することも非常に多いです。

症状

メラノーマによる症状は、腫瘍が発生した場所により異なります。

今回ご紹介する症例のように口腔内に腫瘍が発生した場合、主な症状は口臭やよだれです。
腫瘍が大きくなると犬が腫瘍を噛んでしまったり、腫瘍細胞が内側から表面の皮膚を突き破ってきたりして出血することもあります。
痛みが出ると、食欲や活動性が低下します。
悪性度の高い腫瘍なので、肺に転移して呼吸が苦しくなることもあります。

治療

メラノーマの治療は大きく分けて3つあります。

外科療法

メラノーマは、発生部位以外に転移がなければ外科手術が第一選択です。
外科手術を行う上で最も重要なのは、腫瘍細胞を完全に除去し再発の可能性を下げることです。
そのため、メラノーマでは腫瘍本体のサイズよりもひとまわり大きく切除することが必須になります。
しかし口腔内に発生したメラノーマでは大きく切除することが難しい場合がほとんどです。
そこで下顎や上顎の先に発生したメラノーマは、場合は顎を切除することで、完全に細胞を除去します。
外科手術では治療期間が
長くかからず、物理的に腫瘍細胞を切除できるのがメリットです。
下顎を切除しても犬では、手術直後を除いて問題なくご飯を食べられることがほとんどですが、見た目が変わってしまうことや術後の痛みが強いのがデメリットです。

放射線療法

メラノーマに対して、放射線療法が選択されることもあります。
放射線療法とは、腫瘍に対して腫瘍細胞に対して特別な機械で放射線を当てることで、腫瘍細胞を減らす治療です。
メラノーマの発生部位から外科手術が選択できない場合などに有効です。
口腔内のメラノーマに放射線療法を行う場合は、外科療法に比べ痛み等の体への負担が軽く、外貌の変化もほとんどありません。
しかし、何度も放射線を当てる必要があるためその都度麻酔や検査をしなければならなかったり、専用の機械が限られた施設にしかないため費用が高額になるというデメリットがあります。

化学療法

メラノーマは転移しやすい腫瘍なので、全身的な治療である化学療法は重要です。
化学療法とは主に抗がん剤を使用する治療法ですが、犬のメラノーマに対してどの抗がん剤をどれくらいの期間使用するのが有効か、まだわかっていない事も多いです。
そのため、多くの場合先に述べた外科療法と放射線療法の補助として行うことがほとんどです。
メラノーマに対して使う抗がん剤には、腎障害などの副作用がある場合もあります。
人間の治療で使用するほど劇的な副作用はないことが多いですが、副作用に注意して使用する必要があります。

当院でメラノーマの治療をした症例

今回ご紹介する症例は、ミニチュアダックスの去勢手術が済んだ男の子です。
年齢は17歳9ヶ月で、歯磨きの時の出血を主訴に当院へ来院されました。
身体検査を行ったところ、左下顎にできた黒色の腫瘤が原因と考えられました。
2ヶ月後に再度確認すると腫瘍が大きくなっていたため、組織を一部切除し、顕微鏡で観察する検査を行いました。
すると黒色の顆粒を含むメラノサイトが多数観察され、メラノーマと診断しました。

初診時と手術前の主流の様子

レントゲンやエコーなどその他の検査で、転移や大きな麻酔リスクがないことがはっきりしたため、ご家族と相談し下顎切除手術を実施しました。
手術は無事に終わり、切除した腫瘤は病理組織診断でメラノーマであり、完全に切除できている可能性が高いと診断されました。

切除した左側下顎

左側下顎切除後の外貌

術後2日目から自分でご飯を食べ始めたので、術後6日で退院となりました。
術後の経過は良好で、定期的に再発がないかをチェックしています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回はメラノーマについて当院で治療した症例をふまえて解説いたしました。
メラノーマは悪性度が高く治療をしなければ、亡くなってしまう事もある腫瘍です。
メラノーマは腫瘍が小さいうちに治療を行うことができれば切除範囲が小さくても再発リスクを抑えることが可能です。
ご家族としても可愛い愛犬の顔が変わってしまうのはショックですよね。
悪性腫瘍は特に早期発見早期治療が重要です。
健康診断や普段の小さな異常に対処することが、愛犬の健康維持に役立つので、どんな小さなことでもご不安なことがある場合はぜひ当院へご相談ください。

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