2024/12/28
腫瘍科
うさぎの毛芽腫の一例うさぎの皮膚腫瘍は切除すべき?
うさぎを触っていてしこりを見つけたことはありませんか?
もしかしたらそのしこりは皮膚の腫瘍かもしれません。
皮膚にできる腫瘍にはさまざまな種類があり、腫瘍によって進行度や治療が異なります。
今回の記事ではうさぎの皮膚の腫瘍について解説していきます。
最後までお読みいただき、腫瘍に関する知識を身につけましょう。
うさぎの皮膚腫瘍の種類
腫瘍は周囲の組織や他の臓器に影響を及ぼすかどうかで良性と悪性に分けられます。
皮膚腫瘍のほとんどは皮膚の表面を覆っている上皮細胞が腫瘍化したものであり、大部分が良性と言われています。
良性の腫瘍
良性の腫瘍は進行スピードが比較的穏やかであり、周囲の組織への浸潤が少ない腫瘍です。
うさぎの皮膚に見られる代表的な良性腫瘍には
- 毛芽腫
- 脂肪腫
- 乳頭腫
- 皮脂腺腫
などが挙げられます。
特に毛芽腫と乳頭腫が多いと言われており、年齢を重ねるごとに頻発する傾向があります。
悪性の腫瘍
うさぎの皮膚の悪性腫瘍は比較的珍しいです。
悪性の腫瘍の場合は周囲の組織に広がったり、血管やリンパ管を通って他の部位に転移したりするなど悪影響を及ぼします。
うさぎの皮膚に見られる代表的な悪性腫瘍には扁平上皮癌などが挙げられます。
皮膚腫瘍の診断
皮膚腫瘍の診断には状況に合わせて細胞診検査と病理組織検査を行います。
細胞診検査
皮膚腫瘍の一般的な検査は細い針でしこりの細胞を採取する細胞診検査です。
細胞診検査はどのような種類の腫瘍であるかの判断材料になります。
病理組織検査
細胞診で判断できない場合や無麻酔での検査が難しい場合は全身麻酔下で組織を採取し、検査を行います。細胞診検査よりも精密な検査です。
画像検査
細胞診検査や病理組織検査で悪性腫瘍が疑われる場合は転移のチェックも行います。
腫瘍の種類によっては肝臓や肺などの臓器に転移することもあるため、レントゲン検査や超音波検査を行います。
うさぎの皮膚腫瘍は良性でも切除すべき?
ここまで解説したようにうさぎの皮膚腫瘍の大半は良性の腫瘍です。
良性腫瘍は比較的周囲の組織への悪影響を及ぼさないことが知られています。
では、うさぎの皮膚腫瘍は良性であっても手術で切除すべきでしょうか?
良性腫瘍の可能性が高い場合は状況に応じて手術に踏み切るかどうかを判断します。
腫瘍の大きさ
手術を実施するかの判断材料の1つには腫瘍の大きさが挙げられます。
腫瘍があまりにも大きくなってしまうと破裂する危険性が高いです。
腫瘍が破裂してしまうと、破裂部位から二次感染が生じたり、こすれて出血してしまうことで生活の質が低下してしまう恐れがあります。
増大傾向のある腫瘍の場合は小さいうちに切除しましょう。
腫瘍の位置
同じ大きさの腫瘍でも、腫瘍のできる位置によってうさぎの生活への影響が異なります。
小さな腫瘍が背中にできた場合は生活にそこまで影響が無いことが多いです。
しかし、お腹側や足の裏に出来てしまった場合は歩行時に床に引きずってしまい出血や潰瘍を起こす可能性があり、手術の対象になります。
実際の症例
ここからは当院の実際の症例を紹介します。
症例は未去勢雄のミニウサギです。
左後肢の先端にしこりがあるとのことで来院されました。
下の写真が来院時の所見です。
細胞診の検査を行ったところ上皮系の腫瘍の可能性が疑われました。
はじめのうちは腫瘍の大きさに変化がなかったので経過を見ていましたが、一年後に増大傾向が見られ再度来院されました。
腫瘍が大きくなり自壊していたため、腫瘍を指と共に切除する手術を行いました。
下の写真が手術前後の画像です。
この症例は術後に消化管の動きが悪くなってしまったため、10日間の皮下点滴と強制給餌を行いました。
その後、術後3週間経過しても再発もなく、後ろ足も問題なく使えています。
下の写真が術後3週間の左後肢の画像です。
今回の腫瘍を病理検査に提出したところ、毛芽腫という良性の腫瘍でした。
このように良性の腫瘍であっても大きくなり生活の質を低下させる要因になるものは外科手術が必要になります。
今回は良性腫瘍でしたが、中には悪性腫瘍の場合もあるため、適切な処置が求められますね。
まとめ
うさぎの皮膚腫瘍は手術が必要なこともあるため早めに対処する必要があります。
手術にはリスクも伴うので治療のメリット、デメリットを含めて治療方針を決めましょう。
当院ではうさぎの診療や手術も行っております。
うさぎのしこりに気づいたらお早めに当院までご相談ください。
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