2024/9/5
エキゾチックアニマル
うさぎの食滞の一例うさぎの食欲不振には要注意!
うさぎで頻発する病気の1つとして食滞が挙げられます。
重症化してしまうと命に関わるため、早期発見が非常に重要な病気です。
今回の記事ではうさぎの食滞について詳しく解説し、実際の症例をご紹介します。
うさぎの健康を守るために最後までお読みいただき、もしもの時に備えておきましょう。
うさぎの食滞とは?
うさぎは草食動物であり、草を消化するために常に消化器官が活発に動いています。
食滞とは胃腸うっ滞とも呼ばれ、胃腸の動きが滞ってしまう状態です。
進行すると胃腸の一部がガスで拡張し、腹痛や食欲低下を引き起こします。
以前は毛球症とも称されることがありましたが、今はあまり言われません。
健康なうさぎでは毛が胃腸の中に入っても排出されますが、胃腸のうっ滞があると、場合によっては毛球を形成します。
毛球が大きくなると腸閉塞を生じることもあり注意が必要です。
食滞の原因
食滞は意外なものが原因である場合もあり、以下のように原因は多岐にわたります。
気温などの外的ストレス
うさぎは非常にデリケートな動物です。
環境の変化に敏感であり些細なことでもストレスになります。
ストレスを受けている状態は消化に悪影響を及ぼします。
不正咬合や全身疾患での食欲低下
不正咬合とは噛み合わせの異常です。
うさぎの歯は生涯伸び続けるため、咀嚼により適切に維持されないと噛み合わせに異常が生じます。
不正咬合や全身の疾患で食欲不振が起こると、消化管の動きも悪くなり食滞の原因になることがあります。
不適切な食事管理
消化の悪いものを摂取すると消化管内の細菌のバランスが崩れてガスの異常発酵や消化不良を引き起こします。
ウサギの主食の基本はチモシーなどの牧草です。
ひまわりの種やナッツなど繊維質が少なくデンプンが多いものをたくさん与えると食滞の原因になります。
食滞の症状
「もしかして食滞では?」
と疑う症状には以下のものが挙げられます。
動物病院を受診する目安にしてみてください。
食欲低下
胃腸の動きが悪くなるとはじめのうちは好きなものは食べていても、やがてフードを食べなくなってしまいます。
うさぎがフードも水もまったく受けつけない場合は早急に動物病院を受診しましょう。
便が小さくなる、減少する
食滞になると食べる量が減るため便が小さくなり減少します。
便の色や形が普段と異なる場合は注意が必要です。
チョコレート色の小粒の便が出たら食滞の可能性が高いため気をつけるべき所見です。
お腹が張る
病状が進行すると胃や腸にガスが貯留し、お腹が張ってきます。
ここまで進行するとうずくまって動かないことが多いです。
痛みがある場合はこれらの症状に加えて歯ぎしりや呼吸促迫などの症状が出ることもあります。
食滞の診断
うさぎの状態や便を確認し、画像検査や血液検査から食滞を診断します。
病気の進行度をみるためにレントゲン検査は重要です。
レントゲン検査
胃拡張が進行しているとレントゲン検査で胃腸のガス貯留が見られます。
さらに造影剤を使用することで腸閉塞、消化管のうっ滞の様子を観察することもあります。
食滞の治療法
うさぎの状態を改善し、食生活を見直すことがおもな治療です。
飲み薬や点滴による内科的治療
内科的な治療により低下した消化管の機能を回復させます。
それぞれの病状に応じて
- 点滴による水分補給
- 胃腸を動かす薬
- 食欲を刺激する薬
- 抗生剤
- 痛み止めの薬
といった治療を組み合わせます。
原因疾患の治療
不正咬合や内臓の疾患で食欲不振に陥っている場合は原因疾患の治療も重要です。
消化管への対症療法に加えて他の飲み薬や外科手術が必要な場合もあります。
胃内異物の除去
胃拡張に進行してしまったうさぎでは食道内にカテーテルチューブを挿入し、胃のガスや内容物を除去します。
下の写真が胃カテーテルを挿入している様子です。
胃内から胃液などの内容物を抜去しています。
重度の胃拡張の場合は速やかにガスや胃液を抜かないと命に関わることもあり、非常に重要な処置です。
強制給餌
薬で食欲が戻らない場合は強制的に給餌することもあります。
食事内容はふやかしたペレットや専用の流動食などです。
シリンジを使って強制的にフードを流し込みます。
食事の見直し
対症療法で治癒したとしても問題のある食事を続けていれば再発率が高くなってしまいます。
消化器系を健康に保つには繊維質を多く含む牧草が必要不可欠です。
牧草を基本とした食事を心がけるとともに消化を助ける水分補給も意識しましょう。
実際の症例
ここからは当院の実際の症例をご紹介します。
症例は避妊雌の2歳のミニレッキスで元気食欲がないことを主訴に来院されました。
体温は35.2℃と低下しており、レントゲン検査で胃拡張がみられました。
下の写真が胃拡張の所見です。
血液検査ではとくに問題はありませんでした。
症状とレントゲン所見から食滞と診断し、静脈点滴や注射などの対症療法を行いました。
下の写真が治療後のレントゲン画像です。
レントゲンでは胃がほとんど目立たなくなっています。
今回の症例は冷房により身体が冷えたことで食欲が低下し、胃拡張につながったと考えられます。
まとめ
うさぎの食滞にはさまざまな原因があり、時には命を脅かす病気です。
特徴的な症状を覚えておくことで早期に治療を行うことにつながります。
食滞を予防するために普段からストレスや食事には気をつけましょう。
食欲不振や便の異常をみつけたら早めに当院までご相談ください。
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