症例紹介

Case

2024/8/17

皮膚/耳科

猫の皮膚糸状菌症の一例皮膚のカビ症は人にもうつる?

猫の皮膚糸状菌症は、おもに免疫力の低下した子猫や高齢猫に発症しやすい真菌(カビ)による感染症です。
猫の皮膚糸状菌症は脱毛、フケ、皮膚の炎症などを引き起こし、適切な診断と長期的な治療が必要です。

今回は猫の皮膚糸状菌症について、実際の症例を紹介しながら解説します。
ぜひ最後までお読みください。



猫の皮膚糸状菌症とは?

猫の皮膚糸状菌症の主な原因は、Microsporum canis(犬小胞子菌)という真菌の感染です。
この真菌は猫の皮膚糸状菌症の80〜90%程度を占めています。
感染は主に感染動物との直接接触や、汚染された環境を介して起こります。
特に若齢猫や高齢猫、免疫力の低下した猫が感染しやすいですね。
真菌は環境中で長い間感染力を保持できるため、感染源の特定と環境衛生の管理が重要です。

猫の皮膚糸状菌症は人にもうつるの?

猫の皮膚糸状菌症は人獣共通感染症であり、人にも感染する可能性があります。感染した猫との直接接触や、感染した猫の抜け毛、フケ、あるいは汚染された物品(ベッド、毛布、ブラシなど)との接触により、人への感染が起こり得ます。

特に注意が必要なのは、小さな子どもや高齢者、免疫力の低下した人です。
これらの人々では症状が重症化する可能性があるため、飼い猫が真菌症を発症した場合は要注意です。
人への感染を予防するために感染した猫の治療を確実に行い、環境の衛生管理を徹底しましょう。
人も感染の疑いがある場合は早めに医療機関を受診することが重要です。

猫の皮膚糸状菌症の症状

猫の皮膚糸状菌症は、以下のような特徴的な症状を示します。

  • 円形の脱毛
  • フケの増加
  • 皮膚の発赤
  • かさぶた

猫の皮膚糸状菌症は頭部や耳、足などに症状が出ることが多いです。
症状の程度は個体差があり、一般的には成猫よりも子猫で症状が顕著になります。
猫の皮膚糸状菌症はかゆみが必ずしも伴わず、皮膚病と認識されないこともあるため注意が必要です。

日頃から猫の体をよく観察し、少しでも異常があれば早めに獣医師に相談しましょう。

診断方法

猫の皮膚糸状菌症の診断は、複数の検査方法を組み合わせて行います。主な方法は以下の通りです。

  • 顕微鏡検査

フケや毛を採取し、糸状菌の胞子や菌糸を確認します。
糸状菌の存在を直接確かめることができます。

  • ウッド灯検査

感染を疑う箇所を特殊な紫外線で観察します。
特にMicrosporum canisに感染している場合は感染している部分の発光が観察されることがあります。

  • 培養検査

フケや毛を培地で培養し、糸状菌の成長を確認します。
確定診断には有効ですが、結果が出るまでに7〜10日かかります。

  • PCR検査

糸状菌のDNAを直接検出する検査で、迅速かつ高感度な診断が可能です。

猫の皮膚糸状菌症の原因はMicrosporum canisが多いですが、それ以外のものだとウッド灯検査で発色せずに陰性になります。
上記の診断方法を適切に組み合わせることで、正確な診断と効果的な治療計画が可能となります。
早期診断と適切な治療は人への感染リスクを低減するためにも重要ですね。

治療方法と対策

猫の皮膚糸状菌症の治療は、主に抗真菌薬の内服と外用療法を組み合わせて行われます。
一般的な治療方法は以下の通りです。

  • 抗真菌薬の内服

イトラコナゾールなどの抗真菌薬を1ヶ月程度継続して投与します。これが治療の中心となります。

  • 外用療法

抗真菌薬入りの軟膏やローションを患部に塗布します。
抗真菌作用のあるシャンプーで全身を洗浄することも効果的です。

  • 毛刈り

特に長毛種の猫では、感染部位の毛を刈ることで薬剤の浸透性を高め、治療期間の短縮が期待できます。

  • 環境対策

感染被毛の飛散を防ぐため、掃除機がけや雑巾がけを行い、塩素系消毒剤で環境を清浄化します。

猫の皮膚糸状菌症の治療は症状が改善しても、培養検査で陰性となるまで継続する必要があります。
抗真菌薬の内服中は肝数値の上昇が見られることがあるので、定期的なモニタリングをしながら治療を行います。

人獣共通感染症であるため、飼い主の感染予防も重要です。
皮膚糸状菌症の治療中は定期的な検査と経過観察を行うことが大切です。

猫の皮膚糸状菌症の実際の症例

ここからは猫の皮膚糸状菌症の実際の症例をご紹介していきます。

4歳のスコティッシュフォールドのオスが背中がただれて、毛が抜けているという主訴で来院されました。
こちらが来院時の症例の写真です。背中が赤くただれていることが分かります。

来院時の皮膚糸状菌症の外見

ウッド灯検査では毛の発光を認め、皮膚糸状菌の感染を疑いました。

ウッド灯検査で見た時の皮膚糸状菌症

ウッド灯検査で発光していた毛を顕微鏡で観察した様子です。毛の周りにぷつぷつして見えるものが真菌の胞子と呼ばれるものです。

皮膚糸状菌症の毛の胞子

これらの検査から皮膚糸状菌症と診断し、抗真菌薬の内服と抗真菌薬の入ったシャンプーで治療を開始しました。
抗真菌薬の内服中は肝数値が上昇することがあるので、定期的にモニタリングをしながら5週間治療を続け、無事に完治することができました。

治療開始2週間後と、治療終了後の症例の写真です。

皮膚糸状菌症の完治後の写真

治療開始2週間で皮膚のただれが改善し、治療終了後は毛も生えそろい、皮膚もきれいになっていますね。

まとめ

猫の皮膚糸状菌症は感染力が強く、他のペットや人に容易に感染します。
特にお家に小さいお子さんや高齢の方がいる場合は注意が必要です。

猫から人への感染の拡大を防ぐためにも、早期に診断し治療を開始することが重要です。
猫の皮膚に異変を感じたり、皮膚炎がなかなか治らないなどとお悩みの方は当院までご相談ください。

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