症例紹介

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2024/8/14

エキゾチックアニマル

デグーの不正咬合の一例噛み合わせには要注意!?デグーの不正咬合を解説

デグーはモルモットやウサギと同様にげっ歯類に分類される体長15cmほどの小動物です。
近年ペットとして飼う人も増えてきています。
デグーを飼う上で知っておいてほしい疾患の一つが不正咬合です。

今回の記事ではデグーの不正咬合について解説し、当院での症例を紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、不正咬合について心当たりのある方は当院にご相談ください。

不正咬合とは?

不正咬合とは噛み合わせの異常です。
不正咬合によって口をうまく動かせなくなり、食欲不振や口の違和感が生じます。

デグーでは不正咬合が非常に多い!

デグーでは歯科疾患が最も多いという報告があるほど歯科疾患は身近な病気です。
デグーを含むげっ歯類は歯が生涯伸び続ける動物です。
げっ歯類は繊維の多い草をよく噛んで食べることで歯がすり減って適切な長さを保っています。

しかし、何らかの原因で歯が伸び続けてしまうと噛み合わせに異常が生じ、うまく口を動かすことができなくなってしまいます。
不正咬合は切歯(前歯)で起こる場合と臼歯(奥歯)で起こる場合があり、臼歯での不正咬合の方が多いです。

デグーの不正咬合の原因

不正咬合にはさまざまな原因があります。
一度治療しても原因を取り除かないと再発の危険性があるため、何が原因で起こったのかチェックする必要があります。

繊維質の摂取量が減少

歯が適切にすり減るためにはチモシーなどの牧草に含まれる繊維質の摂取が重要です。
食事内容がペレットや野菜に偏ってしまうと歯がすり減る機会が減少し、不正咬合の原因になります。
主食は牧草にして、足りない栄養素を補う副食としてペレットを活用しましょう。

ケージのかじりすぎ

ケージをよくかじるデグーの場合は硬い金具をかじることが原因で歯の歪みが起こります。
歯の歪みにより歯の生える方向に異常が生じ、不正咬合の原因となります。
物理的にかじれないようにネットを付けたり、おもちゃをいれてストレスを軽減させたりするなど対策しましょう。

リンの過剰摂取

デグーの歯科疾患の原因としておやつなどに含まれるリンが挙げられます。
リンの摂取量が多いと歯の成分に影響を与え、歯の異常を起こしやすいと報告されています。
おやつを与える時は成分をチェックし、適正量を守りましょう。

不正咬合の症状

デグーに以下の症状がみられる時は不正咬合の疑いがあります。

  • 食欲が落ちる
  • よだれの量が増える
  • 口を気にして前足で掻く

食欲不振に陥ると体重減少や元気消失につながることもあるので注意が必要です。
よだれの影響で口周りの脱毛、皮膚炎を起こすこともあります。

不正咬合の診断

不正咬合の診断は症状に合わせて口の中の視診、頭部のレントゲン検査を行います。

見た目

切歯(前歯)の不正咬合の場合、歯並びの悪化は視診で十分に判断できます。
臼歯(奥歯)の不正咬合の場合はデグーの性格にもよりますが、十分に判断できないことが多いです。
デグーの小さい口をくまなく評価するのは外側からでは限界があるため、必要に応じて麻酔下で硬性鏡と呼ばれる内視鏡の一種を用いて口腔内を観察することもあります。

頭部レントゲン検査

頭部のレントゲン検査では噛み合わせや歯根と呼ばれる歯の根元の部分の評価を行います。
レントゲンでは視診では見るのが難しい臼歯まで評価することができます。

デグーの不正咬合の治療

デグーの不正咬合の治療には伸びすぎた歯の切断、研磨を行います。

歯切りとは

開口器を用いて口を開いた状態で歯切り専用のドリルで歯を削ります。
切断後は切断面に圧をかけすぎないように慎重に研磨を行います。
不正咬合は処置後に再発することも多い疾患です。
定期的な処置が必要になる場合もあるので注意が必要です。

歯切りには全身麻酔は必要?

切歯のみが伸びている場合は無麻酔での切断が可能です。
しかし、臼歯が伸びてしまっている場合は過度の保定でデグーに大きな負担を与えてしまうため麻酔下での処置が推奨されます。
デグーの歯は小さく慎重な処置が要求されるため、全身麻酔で不動化してから処置することが望ましいです。

デグーの不正咬合の症例

ここからは当院で治療した実際の症例をご紹介します。

症例は未去勢雄の2歳2か月齢のデグーで食欲の低下、歯が伸びていることを主訴に来院されました。
下顎の切歯が過剰に伸びており、視診にて切歯の不正咬合と診断されました。下の写真が切歯の不正咬合の所見です。

治療前の不正咬合のデグーの切歯

また麻酔下で口腔内の評価を行ったところ、左下顎の臼歯も不正咬合と診断されました。下の写真が臼歯の不正咬合の所見です。

治療前の不正咬合のデグー

この症例では切歯、臼歯の不正咬合に対して麻酔下での歯切りを行いました。下の写真が処置後の写真です。
過剰に伸びていた切歯と臼歯が適切な長さに切断され、正常に口を閉じられるようになりました。

治療後の不正咬合のデグー

この症例では処置後、食欲は改善し治療は終了しました。

まとめ

デグーの不正咬合は適切に処置することで十分に改善しますが、再発も多い疾患です。
不正咬合を放置してしまうと食欲不振に陥り、健康を害することもあります。
デグーを健康的に飼育するために、不正咬合の予防に考慮して飼育環境を整えましょう。

当院ではデグーの麻酔にも対応しております。
デグーの不正咬合にお困りの方はぜひ一度ご相談ください。

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