2024/8/1
神経科
犬の椎間板ヘルニアの一例椎間板ヘルニアの手術でもう一度歩けるようになった症例
椎間板ヘルニアは犬の病気の中でも有名で、1度は耳にした事のある方も多いのではないでしょうか。
何となく
- ミニチュアダックスで多い
- 腰が痛くなる
- 歩きづらくなる
などのイメージはあるけど、詳しくどんな病気かはわからないという方もいらっしゃるでしょう。
今回は椎間板ヘルニアに罹患し、手術で回復した症例を紹介しつつ、椎間板ヘルニアという疾患について解説いたします。
椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアとは、犬で最も多い神経疾患の1つです。
背骨は椎骨という小さな骨が並んでいる構造をしていて、その椎骨と椎骨の間を椎間板と言います。椎骨には真ん中に穴が空いており、その中を骨髄という太い神経がまっすぐ走っています。
椎間板ヘルニアとは、椎間板が変性して形が変わってしまい、骨髄を圧迫する病気です。
腰の脊髄で発生する腰部椎間板ヘルニアが多いイメージですが、首の脊髄で発生する頚部椎間板ヘルニア、胸の脊髄で発生する胸部椎間板ヘルニアも少なくありません。
原因
椎間板の変性の仕方は、ハンセン1型と言われる、椎間板物質がかたくなり椎間板の外側にある線維輪というバリアを破綻して出てきてしまう場合と、ハンセン2型と言われる線維輪ごと形が変わってしまう場合があります。
ハンセン1型の原因は遺伝で、ミニチュアダックスフンドに代表される軟骨異栄養犬種と言われる犬種で発生します。
ハンセン2型の原因は加齢です。そのため、さまざまな犬種で発生します。
症状
症状は、震えや知覚過敏、活動性の低下など痛みに関わるものだけでなく、重症になると麻痺により立てなくなったり、排泄がコントロールできなくなることもあります。
症状の重症度によりグレード1〜5に分けられます。
グレード | 症状 |
1 | 痛みのみ |
2 | 軽度の麻痺はあるが歩ける |
3 | 歩けないが自力で排泄できる |
4 | 自力歩行、排泄できないが痛覚は残っている |
5 | 自力歩行、排泄できず、痛覚もない |
ハンセン1型は急性に発生することが多く、ハンセン2型は慢性に進んでいくことが多いです。
診断
椎間板ヘルニアの診断は主に触診、レントゲン、MRIで行います。
触診では首からお尻まで、痛い箇所はないか、麻痺の進行度合いなどを見ていきます。問題のある箇所の部位をおおまかに把握することが目的です。
レントゲン検査では、触診で疑わしいと判断した場所を中心に、触っただけではわからない構造の変化などを探します。椎間板ヘルニアは、椎間板が本来ある場所が少し狭くなるなどの異常がわかります。
ただ、レントゲンでは異常がなくても、椎間板ヘルニアではないとは言い切れないため、症状や検査上疑わしい場合はMRIに進みます。
MRI検査では、脊髄造影といって脊髄に色をつける検査を同時に行い、実際に圧迫されている脊髄を確認することで、椎間板ヘルニアの確定診断をすることができます。
MRI検査は通常全身麻酔をかけて行います。
治療
治療は内科療法と外科療法があります。
内科療法
内科療法はグレードの低い場合に推奨され、そのメインとなるのは安静です。
動物は自分で安静にしておくことはできないので、小さなケージに入れて出さないようにすることで運動を制限します。
また、脊髄や靱帯に炎症が起こるため、抗炎症薬や痛み止めを使うこともあります。
外科療法
外科療法はグレードが高い場合や、内科療法に効果がなかった場合に選択されます。椎骨の一部を切除して、圧迫している椎間板物質を除去することで脊髄の圧迫を解除します。
症状の重症度により適した治療法を組み合わせて行います。
椎間板ヘルニアの実際の症例
ここからは当院で治療した実際の症例をご紹介します。
症例は去勢済みの5歳のカニンヘンダックスです。
右後肢を引きずっているとのことで当院を受診されました。
触診で腰を触ると痛がり、両後肢の正しい姿勢を保つための反応が弱くなっていました。そこでMRI検査を実施して、12番目の胸椎と13番目の胸椎の間の椎間板ヘルニアと診断しました。
治療は当院にて、片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー術)という手術を行いました。
手術を行ったことで、痛みも改善され、術後1ヶ月半経った現在は、右後肢の反応が少し弱いですが、歩くことができるようになるまで回復しています。
まとめ
今回は椎間板ヘルニアについて詳しくご説明いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
犬が突然立てなくなるというのはご家族にとってとてもショックなことだと思います。
ご自宅の犬が立てなくなってしまった場合すぐにご相談いただければ、しっかり検査をして、犬とご家族にとってベストな治療をご提案いたします。
気になる症状がある場合はぜひ当院までご相談ください。
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