症例紹介

Case

2024/7/8

消化器科

猫の消化器型リンパ腫の一例食欲不振と嘔吐の原因は腫瘍の可能性もある

消化器型リンパ腫は猫の胃腸に発生する腫瘍の中で最も多い腫瘍であり、局所あるいは全体的に発生することがあります。

「食べているのに、最近痩せてきた」
「元気だけど、よく吐くようになった」
「食欲も低下していて、吐いたり下痢をすることもある」

などといった症状はありませんか?

実はこれらは消化器型リンパ腫の猫でよくある症状です。

今回はリンパ腫が小腸にできた症例を交えながら、消化器型リンパ腫について解説していきます。

猫の消化器型リンパ腫とは

リンパ腫は血液がんの1つで、白血球の中のリンパ球ががん化する病気です。
体の全ての組織で発生する可能性があり、消化器は猫のリンパ腫の中で最も発生頻度が高い場所です。
平均発症年齢は10~12歳とされ、性差はありません。

消化器型リンパ腫は

  • 小細胞性リンパ腫
  • 大細胞性リンパ腫
  • LGLリンパ腫

に分けられます。

胃腸にリンパ腫ができた時の症状

症状は

  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 体重減少

などが挙げられます。

小細胞性リンパ腫の症状は比較的緩やかですが、大細胞性リンパ腫の症状は数日~数週間で急激に進行、悪化します。

検査方法

検査方法は

  • 腹部の超音波検査
  • 細胞診検査
  • 病理組織検査

があります。

点滴や投薬といった対症療法に反応しない嘔吐、下痢、体重減少がある場合は、腹部の超音波検査を実施し、胃腸の壁の厚みやリンパ節の腫れを確認します。
厚みや腫れがある場合は針を刺して細胞診検査を実施します。
細胞診検査で細胞が採れない場合は内視鏡検査や、お腹を開けて一部の組織を採る病理組織検査を行います。

治療

治療には外科的治療と内科的治療があります。

外科的治療は、リンパ腫が原因で胃腸に穴が開いた場合や、胃腸の壁の肥厚により食餌の通過性が悪い場合に実施されます。

内科的治療はリンパ腫に対する抗がん剤治療と、体調に合わせた支持療法に分かれます。
小細胞性リンパ腫の代表的な治療にはクロラムブシルの投薬治療があります。
大細胞性リンパ腫の代表的な治療は、

  • ビンクリスチン
  • ドキソルビシン
  • シクロホスファミド
  • L-アスパラギナーゼ

などの抗がん剤があり、これらを組み合わせて実施します。

支持療法では、

  • 吐き気どめ
  • 胃粘膜保護剤
  • 消化管運動改善薬
  • 抗菌薬

などを体調によって使用します。

消化器型リンパ腫の余命

小細胞性リンパ腫は、内科的治療を行なった場合の生存期間中央値が22~44ヶ月であったという報告があります。
大細胞性リンパ腫は、内科的治療を行なった場合の生存期間中央値は45~100日前後と言われています。
LGLリンパ腫は消化器型リンパ腫の中で最も余命が短く、無治療での生存期間中央値は2日で、抗がん剤治療を行なっても2ヶ月以下だったという報告があります。

実際の症例

ここからは当院で治療した消化器型リンパ腫の実際の症例についてご紹介していきます。

症例は去勢済みの14歳3ヶ月齢の雑種猫で、食欲の低下と嘔吐を主訴に来院されました。
レントゲン検査では、肺の一部に結節性の白い影があり、超音波検査では、小腸の一部の壁が厚くなっており、近くのリンパ節が腫れてることが見つかりました。

以上の結果を踏まえ、細胞診検査を行ったところ、「大細胞性の消化器型リンパ腫」という診断が下されました。

肥厚していた小腸は、食餌の通過性に支障が出ていると考え、外科手術により切除をしました。

摘出した組織を用いて、抗がん剤の感受性試験を行い、結果に沿った治療を実施しました。

経過は良好で、肺の結節も消失し、約310日間にわたり大きな再発もなく過ごすことができました。

まとめ

今回の症例は大細胞性リンパ腫でしたが、生存期間中央値をゆうに越して生きてくれました。
猫の消化器型リンパ腫は予後が悪い場合もあり、早期発見・早期治療が大事です。
特に中高齢の猫は、嘔吐の頻度や体重の減少など、今一度お家で気にしてみてくださいね。

もし腫瘍が見つかった場合でも、当院には腫瘍認定医が在籍しており、最新の情報や知見から症例にあった検査、治療のご提案が可能です。
セカンドオピニオンの受け入れもしておりますので、お気軽にご相談ください。

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