症例紹介

Case

2024/5/18

泌尿器/生殖器科

ブドウの誤食をした犬の一例内視鏡によりブドウの摘出、胃洗浄をおこなった症例

犬の誤食は日常の診察でもよく見られます。
誤食の中でもブドウは犬の腎不全を引き起こすことが報告されており、命に関わります。

今回はそんな命に関わる可能性のある、ブドウを誤食した症例を紹介しつつ、ブドウの危険性について解説していきます。

犬にブドウがダメな理由

犬の誤食は日常の診察でもよく見られますが、ブドウは犬にとって危険な食べ物と言えます。

果実や乾燥した状態のブドウは、比較的多くのご家庭に存在し、犬が食べてしまう機会も多くなります。
ブドウは犬の腎臓にダメージを与え、急性の腎不全を引き起こしますが、ブドウの何が腎臓の毒になるのか、どういうメカニズムで中毒を起こすかは分かっていません。
今のところ分かっているのは、ブドウにより腎臓の尿細管という部分に壊死が起こるということです。

致死量は?

ブドウとその乾燥製品に対する犬の感受性は、かなりのばらつきがあると言われており、1kgの乾燥ブドウを食べても全く問題がなかったという報告から、約8kgの犬が4、5個のブドウを食べただけで急性の腎不全を起こしたとの報告もあります。
ブドウの搾りかすでも中毒の症状が出たという報告さえあります。

腎不全を起こした多くの症例が死亡または安楽死となっていることから、ブドウはいかなる量を食べたとしても病気を起こす可能性があるとして、迅速に対応する必要があります。

症状

症状は摂取後少なくとも24時間以内に現れ、大半は6時間以内に見られます。

典型的な症状として

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 食欲不振
  • 嗜眠
  • 腹痛

などがあります。

腎不全の兆候としては

  • 尿が明らかに少ない
  • 尿が出ない
  • 水をすごく飲む

などがありますので、これらが見られる場合はすぐに病院へご連絡ください。

ブドウの誤食時の対応

ブドウの誤食時にお家でできることは残念ながらありません。
食べた直後であれば、病院で吐かせる処置を行います。
この時、食べた個数が正確にわからない場合は内視鏡などで確認する必要があります。
また、胃洗浄や活性炭の投与により、ブドウの成分がなるべく体内へ吸収されないようにします。
その後、少なくとも48~72時間は積極的な輸液や血液検査で腎臓の数値を見ていく必要があります。
腎臓にダメージがある可能性が示唆される場合は、積極的に尿を出す薬剤を使用し、腎臓へのダメージが深刻な場合は透析を行う症例もいます。

実際の症例

1歳6ヶ月の避妊雌のシェルティがブドウの誤食で当院に来院されました。
催吐処置によりブドウを3~4粒吐くことができましたが、レントゲン検査では胃の中にまだ何かが入っている可能性が高いと考えられました。

そのため麻酔をし、内視鏡を用いてブドウの除去と胃洗浄を実施しました。

その後は十分な点滴を行い、ホームドクターでの治療の継続となりました。

まとめ

ブドウがなぜ犬に中毒症状を起こすのか、原因やメカニズムが未だに解明されていないため、どんな量でも中毒を起こす可能性があります。

そのため誤食時は速やかに動物病院へご連絡していただき、ブドウを体内から排泄し、その後も数日間は積極的な点滴などの治療や腎数値の測定を行うべきと考えます。

ブドウは人間の日常の生活ではありふれたフルーツです。

今一度危険性を知っていただき、万が一のことがないようにご注意していただければと思います。

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