2024/3/21
循環器/呼吸器科
犬の心膜液貯留の一例健康診断で見つかった心タンポナーデの前兆
「健康診断に行くのってめんどくさい」
「必要なのは分かってるけど値段が高い」
「健康診断に連れて行きたいけど犬が動物病院に行くのを嫌がるから行けない」
そんなふうに思われている方は多いのではないかなと思います。
それもそのはずで犬や猫の健康診断では異常が見つからないこともしばしばあり、健康診断に行っても行かなくても実際に生活は変わらないことも多いです。
しかし、健康診断をすることで大きな病気が見つかり、一命を取り留めることもあります。
今回は健康診断で心臓の検査をすることで心膜液貯留を診断・治療をすることができた犬の症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
健康診断の大切さ
犬や猫が歳をとるスピードが人間よりも早く、1年で人間でいうところの4~7歳歳をとると言われています。
人間は1年に1回くらい健康診断を行うことが多いですが、これをそのまま犬や猫でやってしまうと、人間でいうところの4~7年に1回健康診断をしていることになってしまいます。
こう考えるととても怖く感じるのではないでしょうか?
犬や猫では最低でも1年に2回の健康診断を行うことが推奨されていますね。
猫・小型犬・中型犬は7歳になるとシニア期、大型犬は5歳でシニア期。
特にこういったシニア期に入っている場合は健康診断に行く重要性は高くなってきます。
健康診断では、簡単なものは血液検査のみ行うことがあります。
しかし、検査は病気の一つの側面しか見ることができず、複数の検査を組み合わせて様々な側面から病気を見ることが非常に大事です。
動物病院で行う検査は血液検査以外に、レントゲン検査、超音波検査、尿検査、血圧検査、心電図検査などがあります。
病気が疑われる症状がある場合は、このような複数の検査を組み合わせた健康診断をするようにしましょう。
心膜液貯留とは
今回の記事では健康診断で心臓の検査を行ったことで見つかった心膜液貯留の犬の症例についてご紹介しますが、心膜液貯留とはどのような状態のことを指すか、まずは解説していきます。
まず心膜についてですが、心膜は心臓を包むように存在している膜です。
心膜と心臓の間には心膜液と言って、心臓の動きをスムーズにするための液体が存在しています。
この心膜液が過度に貯留してしまった状態が心膜液貯留と言います。
心膜液貯留は出血、炎症、浮腫、腫瘍によって発生すると言われていますね。
心タンポナーデとは
心タンポナーデは心膜液貯留が重度となり、心臓の動きを阻害してしまう状態のことを指します。
心膜液によって心臓の動きが悪くなると全身に血液を送ることができず、重度な低血圧になってしまうのですね。
心タンポナーデはこの低血圧から死亡する可能性のある緊急疾患です。
診断したらすぐに治療しなければいけないということですね。
心膜液貯留を見つけたら心タンポナーデになる前に治療するのが理想です。
心膜液貯留の実際の症例
ここからは犬の心膜液貯留の実際の症例をご紹介していきます。
今回ご紹介する症例は12歳の柴犬で健康診断で来院されましたが、健康診断の前日に転倒し、20分ほど震えていたとのことでした。
健康診断で行ったレントゲン検査では心臓の陰影の拡大と、超音波検査では心膜液の貯留が認められました。
幸いなことに心タンポナーデではなく、明らかな腫瘍や出血する原因もなかったため、自己免疫疾患に伴う心膜炎と仮診断し、治療を開始しました。
治療はステロイドと免疫抑制剤を使用し、日によって心膜液の増減はありつつも徐々に減少し、現在では心膜液の貯留は抑えられ、元気に過ごせています。
まとめ
今回ご紹介した心膜液貯留は健康診断で偶然見つけることができました。
しかし、簡単な健康診断では血液検査だけを行うことも多く、必ずしも心臓のレントゲン検査や超音波検査を行うとは限りません。
心臓病を疑う場合は次のような症状があります。
- 咳をする
- 呼吸が早い
- 転倒する
- 失神する
このような症状がある場合は心臓病の可能性を考え、積極的な検査を行ってみてはいかがでしょうか?
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